院長ブログ「真夏の日」

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院長ブログ「真夏の日」

  • 2019.08.01

    書中お見舞い申し上げます。本当に暑い日が続いています。皆様、いかがお過ごしですか。

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    さて8月10日が「健康ハートの日」という日であることをご存じですか。これは8月10日がハート=810と読むことができることから、1985年に日本心臓財団が8月10日を健康ハートの日と決めました。(図1)。つまり語呂合わせなのであります。同財団がハートの日を決めた目的は生活習慣を見直し、心臓に悪い影響を与える高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスク因子を軽減し、いつまでも元気に健康寿命を延ばす点にあります。8月10日という真夏の日に心臓を大切しようという姿勢は有意義であります。

    ところで面白いことに「世界ハートの日」という日も設定されています。これは世界心臓連合(World Heart Federation)が2011年に9月29日を世界ハートの日と制定したものです。(それ以前の2000年9月から最終日曜日を世界ハートの日としていました)。なぜ9月29日に決定されたかの理由は、調べた限りではよく分かりません。現在、世界保健機構(WHO)と世界心臓連合(World Heart Federation)が協同で心臓病予防の啓発キャンペーンを行っています。

    このようにハートの日は2つあることを今回初めて知りました。健康ハートの日は日本発、世界ハートの日は外国発といえるかもしれません。どちらのハートの日も増え続ける心臓疾患を予防するという目的は同じであります。ただ日本国内では8月10日のほうが9月29日よりもキャンペーン活動が多いようです。何より暑い真夏の8月、そして少し涼しくなった9月と2ヶ月続けて心臓に留意をする姿勢は意味のあることと思います。というわけで夏の心臓疾患とりわけ心筋梗塞について今回少し考えてみました。

    高血圧症と心筋梗塞には深い関係があります。血圧には季節変動があります。一般に血圧は夏に下がり、冬に高くなる傾向があります(図2)。そのため高血圧の人では夏の血圧は落ち着き、冬は上昇傾向にあります。

    冬には心臓への負担が強く、寒い季節には心筋梗塞の発症が多いということは容易に理解できます。事実、甲府盆地での心筋梗塞発症例998名の検討によりますと心筋梗塞は冬に多く発症していました。さらに30日以内の院内死亡率も冬に高いことが報告されています(図3)。このようなことから夏という季節では心筋梗塞のリスクが少なく、冬よりは安心だと思ってしまいがちです。

    しかし、この考えが必ずしも妥当ではないとする研究報告を読む機会がありました。同報告により、夏における心筋梗塞の意外な特徴を知ることになりました。これは昨年の4月にJournal of the American Heart Associationのオンライン版で発表されたものです。

    論文の結論を先に言いますと「夏は他の季節に比べて夜間の急性心筋梗塞の発症数が増加する」というものであります。これは夏には何となく心筋梗塞のリスクが低いと感じていることとは相反するものであります。夏の夜の心筋梗塞は注目せねばならないのです。本調査は京都府立医科大学の西真宏・医師(循環器内科)の国際研究グループが、世界7ヶ国における心筋梗塞の発症例2270人を対象とした疫学研究です。まず2270人が春夏秋冬いずれの季節に心筋梗塞を発症したのか、季節別に心筋梗塞の発症時期を分析しました。次に心筋梗塞の発症の時間帯を日中(6時から18時)と夜間(18時から翌日6時)に分け分析しました。つまり心筋梗塞の発症を季節別ならびに時間帯別に4つに分けて検討したわけです。その結果、夏では日中よりも夜間に発症する心筋梗塞が増加するということが分かりました。夏とは反対に他の季節では心筋梗塞は、それほど夜中に発症が多くない傾向にありました。つまり暑い夏に夜には心筋梗塞の発症に注意すべきというわけです。これを本研究グループは「サマーシフト」と名づけました。発症時刻が昼から夜へとシフトしているからです。

    それでは何故、夏の夜間帯に心筋梗塞の発症が多いのでしょうか。これは夏は日照時間が長いためビタミン D の合成が多くなります。ビタミン Dが心筋梗塞の発症に関与しているのではと研究グループは推定しています。もちろん暑い夏、寝ている時に汗をかき、睡眠中ということで水分補給がなければ血液が濃縮して心筋梗塞が発症しやすくなることも原因となります。

    このことから明らかなように夏だから心筋梗塞の心配は少ないと思って油断することは禁物です。日照時間の長い夏、そして暑い夜には心筋梗塞が密かに忍び寄っているのです。真夏の夜の夢ならぬ、真夏の夜の心筋梗塞なのであります。ハートの日を思い出し、心臓を大切にして暑い夏を乗り切りましょう。

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    図1 日本心臓財団のホームページからの引用https://www.jhf.r.jp/topics/2014/003595/

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     図2 血圧の季節変動 日本心臓財団のHPからの引用https://www.jhf.or.jp/topics/2014/003745/

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    図3 季節ごとの急性心筋梗塞症発症数と院内死亡率http://www.doyaku.or.jp/guidance/data/H21-8.pdf

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