院長ブログ 「熱中症の話」

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院長ブログ 「熱中症の話」

  • 2019.07.05

    いよいよ7月、夏本番となりました。暑い日々がやってきました。皆様方には如何お過ごしでしょうか。大変気になることとして九州地方の豪雨による河川氾濫そして山崩れの報道があります。各地では避難勧告が出されており、心を痛めているところです。皆様、十分に注意をして下さい。また今年は手足口病とりんご病が子どもさんの間で猛威を振るっています。無理をして体調を崩されないように、日頃から十分にお身体には注意をしてください。

    蒸し暑い日の雨が降り止み、夕方になってようやく涼しくなりました。隙間時間を見つけて神戸の街の中に出てみました。暑さと夕霧に包まれたビル街に涼感が少し漂っていました(写真)

    ビル街.png 涼感の漂う夕方の神戸のビル街

    夏になると毎年、熱中症のニュースが各メディアでは飛び交います。熱中症を我々は何となく知っているつもりでいます。暑い日には熱中症に注意しようという意識は、皆さん持っていることでしょう。ただ医学的な定義や、より詳しいことまでは余り関心がないかもしれません。そこで今回、熱中症について少し掘り下げてみました。

    熱中症の定義は日本救急医学会の熱中症に関する委員会によりますと次の通りであります。それは「暑熱曝露あるいは身体運動による体熱産生の増加を契機として高体温を伴った全身の諸症状(heatillness あるいはheat disorders)が引き起こされる。この暑熱による障害は従来、主に症状から分類され熱失神(heat syncope)、熱痙攣(heat cramps)、熱疲労(heat exhaustion)、熱射病(heat stroke)などとして表現されてきた。これらの諸症状・病態を一連のスペクトラムとして熱中症とする」としています(http://www.jaam.jp/html/info/2015/pdf/info-20150413.pdf)。少し分かりにくい定義ですが、あらためて読み直し、従来の考え方を整理して理解するには必要と考えられます。以前は熱失神、熱痙攣、熱疲労、熱射病のいずれであるかを考えて対応していました。しかし本ガイドラインは熱中症をひとつの一連の病態としてとらえて対応すべきとしているのです。熱中症に対する基本的な考え方が変わったというわけです。

    次に熱中症の疫学についてです。まず熱中症の人はわが国ではどのぐらいいるのでしょうか。これには3つの統計が参考になります。それは

    1. 総務省消防庁による熱中症患者の搬送者数
    2. 厚生労働省による人口動態統計での熱中症死亡数
    3. 厚生労働省による診療報酬明細書の分析からみた熱中症患者数


    3つであります。これら3結果を大まかにまとめていいますと、1年間の熱中症の発症数は約40万人、そのうち8.7%(約35,000人)が入院、0.13%(約520名)が死亡というものであります。もっとも、これら数値は統計として表に出てきたものであり、実際にはより多くの熱中症患者さんがいるものと推測されます。それにしても、あらためて患者さんの数は多いものと再認識しました。さらに3統計を詳しく検討し、気になる要点をまとめてみました。

    まず①の熱中症患者の搬送者数です。今年2019年の5月の時点において熱中症で搬送される人が急増加していることが総務省消防庁の統計で示されています(1)5月といえば、まだ暑さは本番ではありません。しかし人間が油断していると早くも熱中症は忍び寄っていることに留意する必要があります。次に②の熱中症による死亡数です。驚くべきことに昔の方が死亡者数は少なく、1994年以降のほうが増加傾向にあるという事実です(2)。近年の死亡者数の増加原因は地球の温暖化、都会でのヒートアイランド現象、また熱中症の積極的な診断がなされるようになったため等々が推測されます。現代の夏では「熱中症おそるべし」というところでしょう、再認識すべき疾患だと思います。なお熱中症の死亡者は高齢者が多くを占めており、高齢者、独居、内科合併症は予後不良の因子であることが示されています。最後に③診療報酬明細書の分析からみた熱中症患者さんです。これによりますと小さな子どもさんには熱中症は比較的少なく、成人以上に多いという傾向が示されています(3)。この理由として子どもさんは熱中症に早く気が付き、自宅でも早めの対応がされているのに対し、成人ことに高齢者では油断し熱中症に気づくことが遅れているのではないためかと推測されます。

    次に熱中症の分類についてです。最近、熱中症は労作性熱中症および非労作性熱中症に分類されて考えられています。労作性熱中症は炎熱環境で起こるものであり、若い人がスポーツをしている時、また中年の労働者におこる熱中症です。いわば昔からの熱中症のイメージに相当するものです。これに対し非労作性熱中症は高齢者、独居の人が室内で発症する熱中症です。前者の労作性熱中症は他人の目があり比較的熱中症に気づきやすい環境にあるため、早期での発見が得られやすい条件下にあります。一方、後者の非労作性熱中症は家の中で孤独な環境で起こることが多く、そのため発見が遅れがちになります。さらに高齢者の熱中症では、ご本人の自覚症状が強くないこと、薬剤の服用のため病状の悪化が起こりやすいという悪条件が重なっています。実際、平成25年の熱中症の死亡数1077人のうち6579歳が351人、80歳以上が482人であり、65歳以上の死亡数が全体の77.3%を占めていました。つまり高齢者における非労作性熱中症の生命予後は、不良であるという点に注意すべきであります。

    最後に熱中症の予防についてです。熱中症において最も大切なことは予防であります。熱中症を単に夏におこる疾患と考えるのではなく、誰でもかかる今そこにある危険な病気と考えて予防するべき疾患なのです。水分の補給、涼しい環境に移動するなどの一般的な予防対策は色々なところで啓蒙運動が盛んにされています。神戸市も7月の熱中症予防強化月間に当たり、ポスターを用いて注意を呼び掛けています(4)。これら予防法は色々と広報されているので是非参考にして下さい。ここでは暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度、Wet Bulb Globe Temperature)を採りいれた熱中症の予防について紹介します。

    暑さ指数、WBGTはまだあまり一般的に周知されていません。これは体の熱代謝に大きな影響を与える①気温②湿度③輻射熱の3つを取り入れた指標なのであります。WBGT28℃を超えると厳重警戒レベルとなり、激しい運動は中止する必要があります。WBGTを簡単に測定する器械も市販されていますので必要ならば購入することも良いでしょう。ただ環境省の熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp/sp/)を閲覧するとWBGTの実況と予測を見ることが出来ます。大変有効な情報が得られ、熱中症予防の必須のアイテムと考えられます。是非、皆様、スマホやコンピュータを用いてWBGTの実況をみて熱中症に対する関心を高めて下さい。そして身近な熱中症に対する積極的な予防をしてください。

    2.png

    1 2019年の熱中症による救急搬送状況 総務省消防庁のHPから

    https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke_sokuhouti_20190617.pdf

    3.png

    2 年次別男女別熱中症死亡数(1968年から2016) 厚生労働省人口動態統計から

    http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_1-3.pdf#search=%27%E7%86%B1%E4%B8%AD%E7%97%87+%E6%82%A3%E8%80%85%E6%95%B0+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E7%9C%81%27

    4.png

    3 医療機関を受診した熱中症患者数(診療報酬明細書)(提供:帝京大学・三宅康史氏)

    http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_1-3.pdf#search=%27%E7%86%B1%E4%B8%AD%E7%97%87+%E6%82%A3%E8%80%85%E6%95%B0+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E7%9C%81%27

    5.png

    4 熱中症は予防が大切  神戸市のHPからの引用

    http://www.city.kobe.lg.jp/safety/fire/ambulance/necchu.html

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