涙活と笑活

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涙活と笑活

  • 2019.03.22

     少しずつ春めいた時候となってきました。これまでにも本ブログで書いたことがある日本笑い学会(http://www.nwgk.jp/)に関することです。同学会が月に1回、日曜日に開催しているオープン講座という企画があります。この講座は笑いをテーマとし、笑いに造詣が深い人が演者となって一般市民を対象として開催されている講演会です。私自身、最近あまり参加する機会がありませんでした。久し振りに講座を聴きに梅田の関西大学キャンパスへ出かけました。数えて第265回目のオープン講演でありました。

     今回の演者は、ラブレター研究家で放送作家の橋本昌人氏(詳しくは同氏のホームページを参照して下さいhttp://book-bridge.jp/member/hashimoto.html)、テーマは「涙活(るいかつ)と笑活(わらかつ)」でした(写真1)。涙活笑活とは少し聴き慣れない言葉です。涙活は橋本氏によると東京方面から使われはじめた言葉とのことです。関西地区ではまだ広まっていません。泣いて涙を流し、これによってストレスを解消し(涙の中にストレスホルモンを排出している)、人間の共感力を育くむこと、これが涙活という言葉の意味であります。吉本新喜劇でもただ笑うだけではお客さんの感動を起こすことは難しいこと、まずは涙を流し共感を得ることが必要なこと、そのあとにおこる笑いが皆の感動をおこすこと、これらのことが講演を聴いて理解できました。つまり、これが涙活と笑活なのです。我々は日常生活において相手に共感をして涙を流し、そのあとで心から笑うことが大切ということが分かりました。涙で気持ちを共感し、そのあとは笑いとともに人々と共感すること、これが大切なのです。また橋本氏は、具体的な涙活の方法として手紙を書くことを紹介されました。氏の著作に「なみだのラブレター」(写真2)があり、これには涙を誘う手紙が収録されています。私も一冊買い求め、早速読んでいるところです。本を読みながら、涙する、そのあと笑いが訪れる、それは素晴らしいことであると私自身も強く思ったところです。

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    写真1 講演のオープニング・スライド   写真2 なみだのラブレター

    出版社: ワニブックス (2013/11/27)

     日本医師会には認定健康スポーツ医という制度があります。その目的は「健康スポーツ医の養成とその資質向上を通して地域保健活動の一環である健康スポーツ医活動の推進を図る」ことにあります(日本医師会のホームページによる)。認定を受けるには必要な研修を受け、審査を通らねばなりません。さらに一度認定されてからも、その後も5年毎に必要な研修会に再度参加せねばなりません。そのため全国各地で認定健康スポーツ医の研修会が実施されています。今回、兵庫県医師会館で行われた認定健康スポーツ医の研修会に参加してきました(図1)。

     今回の健康スポーツ医の研修会は主として2つの講演会で構成されていました。一般に健康スポーツ医研修会には整形外科系と内科系との2つの分野があります。今回も整形外科系は「足関節のスポーツ障害」、内科系は「女性アスリートの貧血」というテーマでした。正直なところ、整形外科領域の話は聴いても内科の医師はほとんど患者さんを診ることがありませんので内科医の私には理解しにくいことが多いものです。しかし、今回は一流スポーツ選手の外傷状況がビデオ映像で流され、分かり易い内容でありました。さらに内科系の「女性アスリートの貧血」については、なかなか勉強になりました。会場からも「正に目から鱗」というような声も聞かれました。というわけで「女性アスリートの貧血」の講演のほんの一部だけを報告してみます。

     演者は国立病院機構西別府病院の松田貴雄スポーツ医学センター長でした。演題は「女性アスリートの貧血はエネルギー不足によって生じ、男性ホルモンであるテストステロンが関与する」であります。この演題をみただけで何となく結論の予想がつきそうです。ともかく、講演を聴いて新しく知った知識が幾つかありました。特に興味が引かれたことを紹介してみます。

     まずは除脂肪体重という考え方についてです。除脂肪体重とは体重から脂肪を除いた体重のことを言います(図2)。ですから除脂肪体重は筋肉、骨、内臓、臓器、血流ということになります。除脂肪体重という言葉を知ってはいました。しかし、あまり意義を考えることもなく、これまで何となくスルーしていました。では何故、除脂肪体重が重要なのでしょうか。それは除脂肪体重が低下した時、これは主に筋肉量の減少が主なのですが、その際に筋肉での基礎代謝が低下しているのです。これが大きな問題なのです。反対に除脂肪体重が増える、つまり筋肉が増えると筋肉での基礎代謝が亢進します。いわば除脂肪体重が増えた分だけ、基礎代謝が亢進するというわけです。基礎代謝が亢進すると摂取したカロリーを消費することが出来、体力はついてくることになります。すなわち除脂肪体重を減らさず(筋肉量を減らさず)、体脂肪を落とすことが、このことが重要というわけです。さらに面白いこととして若い女性では身長が伸び、次に除脂肪体重が増え、その後に骨量が増えてくるという事実があることです(図3)。したがって若い女性では成長期にエネルギー不足があれば除脂肪体重が増えず、将来の骨粗しょう症の原因となるのです。このように今回は除脂肪体重の意味がよく分かりました。

     次に本講演のタイトルにある男性ホルモン、テストステロンについてです。一般に女性の貧血には鉄欠乏性貧血(鉄の摂取不足)、溶血性貧血(スポーツによる溶血)、出血性貧血(月経による失血)、希釈性貧血(成長による希釈)の4パターンがあります。ところが松田先生によると女性アスリートの貧血はエネルギー不足によるものです。そしてエネルギー不足があると蛋白合成が低下するのです。ですから女性アスリートに対し単に鉄を投与しても貧血は治らないのです。ここで男性ホルモン、テストステロンが重要な意味を持っています。テストステロンは蛋白合成能を上げ、血液の元となるヘムとグロビンを合成し、貧血を改善するのです。ですからテストステロンの低い女性では貧血が改善されにくいということになります(図4)。したがって一般女性の貧血に対しも漫然と鉄材を投与するだけでなく、エネルギー不足およびタンパク合成能力の低下などを考慮して対処すべきというわけです。

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    図1 研修会のプログラム表紙から

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    図2 除脂肪体重とは?

    当日の松田先生の講演スライドから引用

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    図3 身長、除脂肪細胞をして骨量

       当日の松田先生の講演スライドから引用

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    図4 スポーツ庁委託事業 平成28・29年度 

    女性アスリートの育成・支援プロジェクト

    女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究

    松田貴雄の「ジュニア女子アスリートのヘルスサポート」からの引用

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