スーパームーン

078-861-0806

トピックス

topics

スーパームーン

  • 2019.02.27

     スーパームーンを御存知ですか?これは月が最も地球に近づき、そのため、いつもより大きく明るく見える満月のことなのです。スーパームーンは天文学において定められた学術用語ではありません。ただ月がとても近くにあるため大きく見える満月というものなのです。今年の2月19日が2月20日に日付へと変わった頃、月と地球の距離は最短の約35万7千キロメートルとなりました。つまり、その刻限にスーパームーンがみられたのです。さすがに私は午前0時過ぎは寒いし、眠たいというわけで11時頃にスーパームーンとなる直前の月を見てみました(写真1)。雲に少し覆われているものの、確かにいつもより大きく明るい月が見えました。スーパームーンは毎年、天気がよければ見ることができます。因みに来年は4月8日ですが、昼間なので見えにくいとのことです。今年はっきり見えてよかったという気持ちになりました。

     街に出てみますと少し暖かく、早春の陽気を感じるようになってきました。

    190227 1

    写真1 少し雲に包まれたスーパームーン

     インフルエンザの流行も峠を越えてきました。そこで今回はインフルエンザから気持ちを切り替えようと、百日咳について少し検討してみました。

     多くの子どもさんが4種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)を乳幼児期に受けております。そのおかげで百日咳の患者さんはインフルエンザ患者さんほど多くはおられません。昭和43年頃から全国で3種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)の予防接種が開始され、百日咳患者さんはある程度見事なまでに減少しました。そのため、何となく私たちは百日咳は過去の病気と思っています。しかし、これは錯覚といってもよいでしょう。今でも百日咳は小さな子どもさんが罹ると重症となる恐れがある感染症なのです。私が子供の頃、小児科医であった父親が「今日も百日咳の子が来たよ」と言っていました。確かに昔に比べて百日咳の患者さんの数は減りました。しかし安心はできないのです。

     それでは百日咳は過去の病気と言えないわけについてです。これを明らかにするため国立感染症研究所による各国の百日咳患者・報告数の年次推移(図1)をお示しします。これから明らかなように我が国では百日咳患者は減少傾向にあります。しかし、諸外国ではむしろ増加している、これが現状なのです。つまり現在、百日咳は米国などの先進諸国で流行の再興があるのです。

     さらに注意すべきことがあります。それは2018年上半期の我が国における百日咳患者2517人の分析結果(図2)をみると分かります。図2をみて明らかなこととして百日咳は、①乳児に多いこと、②予防接種の既往歴がある小学生に多いこと、そして③40才を中心とした成人にもみられるということです。①については4種混合予防接種の開始が生後3ヶ月からであることに問題があります。つまり3ヶ月未満の乳児については予防接種が未接種のため、百日咳から守ることが出来ないのです。2018年では3か月未満の子どもさんの百日咳患者さんは69人が報告されています。これら3か月未満の患者さんの臨床経過は学会論文等にも掲載されていますが、大変な状況であることが示されています。多くの場合、乳児の百日咳は家族からの感染であるとされております。外国では妊娠末期のお母さんに百日咳の予防接種を実施し、胎盤を通じて赤ちゃんに免疫を与える工夫も実施されているところです。これで何とか、新生児や乳児の百日咳を予防しようという試みです。②については乳幼児期に受けた3種(4種)混合ワクチンによる百日咳予防効果が、4~12年で弱まってしまうからです。それと百日咳患者さんが減ったため、自然感染した百日咳患者さんに出合う機会が減り、免疫の再活性がされなくなったためです。これをブースター効果といいます。現行の予防接種制度では、2才以降に百日咳の予防接種をする機会がありません。そこで現在、小学校高学年において実施されている2種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア)に百日咳を加えた3種混合ワクチンを実施し、この追加接種により免疫の再賦活化を実施しようとする方向に向かっています。残念ながら小学校高学年の3混ワクチンを受ける人は少ないのが現状です。③については40歳代という社会の中心の年代に多いことが大きな問題です。成人では子どもさんほど百日咳の典型的な症状は出ませんし、全身状態の悪化が軽いこともあります。ただ単に「咳がしつこく続いているのでは」ということで見過ごされている可能性も考えられます。そのため家族内感染を起こすリスクもあるのです。したがって百日咳といえば昔は子どもさんの病気であったのが、今では大人の病気でもあるといえるでしょう。2007年には日本で百日咳の集団感染がありました。このように百日咳は、まだ軽く考えることは適切ではありません。特に重症な経過をとる子どもさんの百日咳を、是非発症抑制する必要があります。

     それにしても百日咳菌(写真3)は、極めて感染力が強いことが特徴です。1人の感染者が何人の人にに感染させ得るか、感染力の強さを表す指標としてアールゼロ(R0、基本再生産数)という基準があります。表1に代表的な感染症のR0を示しました。百日咳のR0は5.5(文献によっては16から21)とされています。インフルエンザのR0は2から3であり、百日咳は極めて感染力が強いことがお分かりいただけると思います。

     最後に診断です。診断にあたっては症状、経過が重要です。詳しくは小児呼吸器感染症ガイドライン2017や教科書に記載されているので割愛しますが、持続する咳の患者さんでは常に百日咳を念頭に置く必要があります。特に最近、後鼻腔ぬぐい液を採取する百日咳LAMP法が開発、実用化されました。これは、優れた検査法であります。2016年11月1日から「百日咳菌核酸検出」という検査名で保険適応となって実施できるようになりました。本法により百日咳の診断を正確にできるようになりました。そんなわけで百日咳の診断は、近年大きく様変わりしたのです。

    190227 6

    図1 各国の百日咳患者報告数の年次推移 百日せきワクチン ファクトシート

    平成29年(2017) 国立感染症研究所

    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184910.pdf

    190227 3

    図2 百日咳症例の年齢分布と予防接種歴(2018年第1週~第26週)(n=2,517*)

    https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/pertussis/pertussis-180815-fig1.png

    190227 4

    写真3 百日咳菌の電子顕微鏡像

    百日せきワクチン ファクトシート 平成29年(2017) 

    国立感染症研究所 のHPからの引用

    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184910.pdf

    190227 5

    表1 代表的な感染症のR 0値  ウィキペディアからの引用

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E5%86%8D%E7%94%9F%E7%94%A3%E6%95%B0

     

pagetop