3月31日は年度末

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3月31日は年度末

  • 2018.03.27

     明治17年、時の日本政府は1年のはじまりを1月1日からするのではなく、4月1日からとすることを定めました。つまり新しい年度を「4月から3月とする制度」を導入したのです。これは4月1日を新年度の開始日とし、3月31日を年度の最終日とするものです。本制度は今もなお日本で引き続き継承されており、学校の入学式も4月になっているわけです。また国の予算も4月からが新しい会計年度となっています。この制度が採用された理由は明確にはわかりませんが、税金徴収に都合がよかったこと等が挙げられています。寒い地方は社会的活動などに制限があったので、暖かくなる春を待ってから税金徴収をしたというわけです。因みにアメリカでは9月が新年度となっており、学校の入学も9月であります。

     さて、このように4月を新年度とする制度を私が述べるには理由があります。それは医療保険制度には2年に1度改定があり、今年の4月1日が改定の施行に当たっているからです。いうまでもなく誰もが安心して医療を受けるために、医療保険制度は大変大事な制度であり、適切な改定はおこなわれるべきです。ただ医療機関にとっては2年に1度の改定のたびに細かな対応を迫られ、難渋な状態に陥ることになります。改定が複雑で俄かには理解不能な点が幾つもあります。そのため改定に関する説明会があり、短時間で新制度への理解と対応を進めなければなりません。日本医師会から電話帳並みの分厚い解説書が送付され、これを前にして呆然することもしばしばです。それでも何とか改定内容を理解し、コンピュータをアップデートをしているところです。このようにして4月からも引き続き円滑な保険診療に心がけたいと考えています。それにしても少し疲れました。そこで気分を転換するために近くの公園に外出すると桜が満開近くでした(写真1)。

     

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    写真1 満開近い桜の花

     

     昨今は臨床医学において本当に多くのガイドラインが出されています。医学のガイドラインとは診療指針、標準治療を示したものであります。日本では30年くらい前に厚生労働省がガイドラインの作成を推奨したという経緯があります。その目的は誰もがどこでも最善の医療を受けることにあります。現在のガイドラインの多くは、学会などの作成によるものです。ガイドラインは全ての患者さんに最善ということではなく、個々の患者さんと医師がガイドラインをもとに話し合って医療を進めていくときに使われます。いわば一般に推奨される治療を理解して進めるに当たり、医師と患者の間を取り持つコミュニケーション道具なのです。現場の医師にとって日頃の臨床においてガイドラインは、しばしば「道標」となっています。なお、ガイドラインには (1) 臨床的課題(クリニカルクエスチョン:CQ)形式のものと、(2) 教科書形式の二つがあります(国立がん研究センターのがん情報サービス)。利用に当たっては、正直なところ(1)のCQ形式のほうが利用し易いと個人的には考えています。

     ガイドラインは多くの疾患について公表されています。毎月のように新しいガイドラインが出されています。某製薬会社のホームページを閲覧しますとガイドラインのアップデートがされており、新しく公表された順番に示されております(図1)。例えば今年2月には「前立腺がん検診ガイドライン 2018年版」が日本泌尿器科学会から出されています。小児科領域の疾患では昨年の秋に公表された「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」(図2)が小児科医の耳目を集めています。本ガイドラインは日本小児アレルギー学会によって作成されたもので一般にJPGL(Japanese pediatric guideline for treatment and management of bronchial asthma)と小児科医の間では呼ばれており、CQ形式で記載されています。これまで数回にわたりJPGLは改訂されており、前回の公表は2013年でした。今回4年ぶりに新しいJPGLが公表されたというわけです。日本小児アレルギー学会のホームページを開くと、その全文が読むことができます。もっとも長文なので全文を読むことは大変です。それでも要点について少しずつ理解を現在深めているところです。

     たしかにJPGLの普及により、喘息の子どもさんの予後は改善しました。図3に示すように最近は子どもさんの喘息による死亡数は減少してきております。また私の外来でも重症の喘息患者さんは減少しています。しかし図4に示すように子どもさんの患者数は大人に比べてまだ多いのが現状であります。ですから小児科においては「喘息はまだ侮れない疾患である」ということになります。さらに患者・家族にとっては生活の質(いわゆるQOL:quality of life)は十分ではありません。この点を十分に考慮したのが今回の新しいJPGL 2017であります。

     ではそのうちポイントとなるところを二つだけ紹介いたします。

    まず

    CQ1 小児喘息患者の長期管理において吸入ステロイド薬(ICS :inhaled corticosteroid)の長期使用と成長抑制との関連はあるか?

    という疑問についてです。これはステロイドが成長ホルモン作用の阻害をし、身長の伸びを抑えるからです。これまではICSを長期間にわたって実施しても、中止により成長は回復すること、それよりも喘息コントロールの方が優先されるというような考えもありました。しかし今回のJPGL次のような推奨がなされました。

    推奨 ICSの長期使用は成長抑制と関連する可能性があるため、適切な投与を心がけることを推奨する。

    つまりICSによる漫然とした長期間投与は不適切ということが示されたのです。

     次に

    CQ5 小児喘息患者の長期管理においてロイコトリエン受容体拮抗薬

    (LTRA)と吸入ステロイド薬(ICS)のどちらが有用か?

    という疑問です。たしかに臨床の現場ではLTRAとICSのどちらが良いのか、ときに迷うことがあります。心情としてICSは低身長の問題もあるので、休薬したくなります。医師が迷えば患者さん・家族は不安になってしまいます。これについては今回、次のように呈示されました。

    推奨 中等症持続型以上の基本治療では、ICSを用いることを提案する。

     すなわち軽度ならばLTRA でよいということであり、ICSを必須としないことが示されたわけです。これは一見、当たり前のように思いますが、これまでは個々の患者さんにおいて悩みながら考えを巡らしたものです。今後はJPGLを手元において対応していくものとなります。

     

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    図1 新しいガイドラインの一覧 武田製薬のホームページから引用

      https://www.takedamed.com/journal-news/guide-line/

     

     

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    図2 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017

       日本小児アレルギー学会

       http://www.jspaci.jp/modules/journal/index.phpcontent_id=12

       出版社: 協和企画 (2017/12/1) ISBN-10: 4877941924

     

     

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    図3 日本小児アレルギー学会・喘息死委員会登録状況(2011) (喘息死亡例207例、死亡年による)

       日本小児アレルギー学会 疫学委員会・喘息死検討部会

       http://www.jspaci.jp/modules/gcontents/index.phpcontent_id=8

     

     

     

     

     

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    図4 平成26年度厚生労働省患者調査 

       独立行政法人 環境再生保全機構のHP

       https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/investigation/prevalence/01.html

     

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