もうすぐ節分

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もうすぐ節分

  • 2018.01.27

     少し気がはやいのですが、2月3日の節分が近づいてきました。その前にある1月20日を大寒(だいかん)といいます。大寒は1月20日という日だけを意味するのではなく、その日から2月3日までの期間をも意味しています。つまり大寒とは寒さが最も厳しくなる今日この頃のことであり、今日1月26日は大寒の真っただ中ということになります。武道界では大寒に寒稽古をしたり、また寒中水泳が行われたりします。寒い日々が続くと体調を崩し、風邪を引きますのでお体には注意して下さい。現実にはインフルエンザが流行を極めており、多くの方が医療機関を受診されています。最近の報道によるとインフルエンザが猛威をふるっています。厚生労働省の発表によると患者数は283万人に上り、過去最多ということです。患者さんは5~9才が59万人と最も多く、10代も40万人が発症しました。今年の特徴としてB型の早期流行がみられる点です。今後、大人や高齢者に人への感染も予想されるので皆さん、大いに注意して下さい。

     というわけで大寒の頃は、毎年落ち着いて机に向かう時間がとれなくなってしまいます。また疲れて気力・体力がなくなるため、勉学が困難になってしまいます。こんな時にこそ「忙中閑あり」という諺を思い出し、時間をみつけて臨床医学の学習に取り組んでいるところです。

     今回は水痘・帯状ヘルペスウイルス(varicella-zoster virus、以下VZV)についてに再学習してみました。VZVは本当に日頃から外来でよく接するウイルスです。VZVは子どもさんでは水痘(水ぼうそう)、成人では帯状疱疹という疾患をひきおこすウイルスです。子どもの時に初めてVZVに感染し発病するとVZVの小児型疾患である水痘となります。水痘になると発熱などの風邪症状とともに皮膚に独特の水痘疹がほぼ全身に出現します。その経過は比較的軽いものです。独特なこととして治癒後もVZVは脊髄後根神経節に生涯にわたって潜伏感染する点です。その後、年月が経過し子どもが大人になってもVZVは神経節に潜伏し続けます。そして体力低下した時、例えば妊娠、高齢化、癌、エイズなどになった時、VZVは再活性化し神経に沿って(多くは片側だけ)湿疹として皮膚表面に出現してきます。これがVZVの成人型疾患である帯状疱疹であります。図1がそのあらましです。このようにVZVは子どもと成人で違った症型を示します。このような特徴があるのです。ですから実地医家の立場からみると子どもさんと大人、つまり小児科と内科では見る角度が少し異なることがあります。そこで子どもと大人において、ある程度共通していることについて検討してみました。

     まず予防接種についてです(なお最近、予防接種については前回本ブログで触れましたので少しだけにとどめます)。子どもさんと大人では予防接種の立ち位置(というか意義)が少し異なるといってよいでしょう。はじめに子どもさんです。水痘予防のために2回水痘の予防接種をします。本予防接種は2014年に定期接種として組み入れられ、これにより多くの子どもさんが受けることになりました。その結果、図2に示されているように水痘患者さんの報告数は減少してきています。水痘予防接種の素晴らしい成果が出ているのです。たいへん喜ばしいことです。一方、成人では50才以上の人に対して帯状疱疹の予防接種が勧奨されています。何しろVZVによる神経損傷は強いものがあり、そのため帯状疱疹の神経痛は特に高齢者では大変痛いものです。時には帯状疱疹後神経痛として数年にわたり痛みが持続することがあります。ことさら注意すべきことは免疫不全の人についてです。免疫不全の人では健常人のような免疫応答ができないので間質性肺炎に知らないうちにかかることがあります。間質性肺炎は痰が少なく診断困難で予後不良です。これらのことを阻止するためにも50才以上の人では水痘ワクチンを受ける必要があります。ただ現状は周知されていないためまだまだ接種者が少ない状況です。今後の広報活動が必要とされます。

     次に診断です。通常、VZVの皮膚症状は直接目視できるので比較的診断は容易です。しかしながら病気の初期段階では単純ヘルペス(HSV)、伝染性膿病(とびひ)とは区別が難しいことを時々経験します。私の診療所でも夏では「とびひ」との区別が容易でないことがあります。このような場合は皮疹からのウイルス分離およびPCR法が理想的な診断法であります。ただウイルス分離は陽性率が低いことが欠点であります。PCR法は単純ヘルペスとの区別も可能であり、保険診療でも認められており有意義です。しかし実施できる施設が限られており、私のような小診療所では実施困難であります。ところが最近、イムノクロマト法を用いた迅速検査法(デルマクイック)が市販され、外来で5-10分で診断可能となりました。外来で簡単に、しかも早く検査結果を出すことができるようになったのです。この新しいイムノクロマト法とPCR法との一致率は96.2%と高く、また患者さんの負担も少ないので初期段階での診断に期待が持てると考えられます。ただし採取した皮疹部のウイルス量が少ないと(107/ml以上のウイルス量が必要)偽陰性となることが分かっており注意が必要です。

     最後はVZVの治療についてです。現在、ウイルスに対し特異的に有効な抗ウイルス薬は2つあります。それはヘルペスウイルスとインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス薬であります。インフルエンザについてはタミフル、リレンザ、イナビルなどの抗インフルエンザ薬が有名であり、誰もが知っている薬剤です。これに対しVZVの抗ウイルス薬は、それほど広くは知られていません。そこで少しVZVの抗ウイルス薬の歴史を調べてみました。1960年代から抗VZV薬の研究が盛んとなり、1964年にビタラビン(Ara-A、アラセナA)が報告されました。10年後の1975年にはビタラビンがVZVに有効であることが報告されました。ビタラビンの作用機序はまだ明らかになっていませんが、現在も外用剤として使用されています。1977年になりアシクロビル(ACV、ゾビラックス)が発見されました。アシクロビルはヘルペスウイルスのDNA複製を阻害する作用をもち、安全性が高いので現在も使われています。アシクロビルの発見者エリオン(写真1)は1988年のノーベル医学賞を受賞しています。エリオンにより人類は初めてウイルスと戦える薬を手に入れたわけです。私個人も医師になりたての頃、アシクロビルの静注により、劇的にヘルペス感染症が軽快し、感動した経験があります。その後もパラジクロビル(バルトレックス)、ファムシクロビル(ファムビル)と次々と新しく改良された抗VZV剤が出現してきました(表1)。これらはゾビラックスのプロドラッグといわれ、投与されると生体で代謝作用を受けて体内で長く作用する薬剤であります。いわばゾビラックスが改良された兄弟のような薬剤であり、服用回数が少なくて済みます。また最近ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬が新しく戦列に加わりました。ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬(アメナメビル)はこれまでの薬剤と異なり、ヘルペスウイルスのDNAおよびRNAの複製の初期段階において、作用します。つまりVZVの増殖においてはヘリカーゼ・プライマーゼという複合体が必要なのですが、この複合体を阻害するのです(図3)。新しい薬剤が次々と出てくるので医療提供者は学び続けねばならないのです。

     

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    図1 水ぼうそうと帯状疱疹の関係

       マルホ製薬のHPからの引用

       https://www.maruho.co.jp/kanja/taijouhoushin/about.html

     

     

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    図2 水痘患者さんの報告数 減少していることが示されています

       https://www.niid.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-idwrs/7620-varicella-20171020.html

       国立感染症研究所のHPからの引用

     

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    写真1 アメリカの薬理学者 ガートルード・エリオン(1918年-1999年)

        ザイロリック、イムランなど8種類の薬剤創薬をした

        Wikipediaから引用

        https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3

     

     

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    表1 VZVの治療薬 Fujimoto Medical SystemのHPから引用

      http://www.fujimoto.or.jp/tip-medicine/lecture-179/index.php

     

     

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    図3 ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬はウイルスのDNAとRNAの複製初期段階で作用

       マルホ株式会社 C0717DY-MCより引用

     

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