あけましておめでとうございます

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あけましておめでとうございます

  • 2018.01.06

     新年、あけましておめでとうございます。本年もマイペースでブログを綴っていきたいと思います。どうか宜しく御願い申し上げます。新しい年を迎えるごとに気持ちを入れ替え、今年こそ何事も頑張ろうと決断しています。しかし、なかなか思うように何事も進むものではありません。加えて当然ですが毎年少しずつ年令を重ね、能力が低下していくため、益々やりたいことの仕上がりが遅れてしまいます。身体の衰えに立ち向かい、工夫して物事を進めていくことになります。そんなわけで年頭にあたり、色々と計画を立て、来ることを頑張ろうと決心した次第です。まずは診療所の自室掃除をすることから手をつけましたが、それにしても不要物の中に埋もれて生活していたことを、まずは反省することになりました。また目のつくところに今年のメインテーマとなる資料を並べることにしました。このようにして正月休みを過ごし、気分を転換をはかり身を引き締めた次第です。そして神戸の街に出て、正月気分を味わいました(写真1,2)。

     

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     写真1 ホテル・ロビーの飾りつけ 

     

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    写真2 元町通り入り口の飾りつけ
    毎年、元町通り入り口の写真を 撮影しています

     

     正月は休みが長いので近所に初詣に出かけ、また普段は時間がないため目を通すことが出来ない文献や教科書を読むようにしています。

     ところで現在、何といっても小児科の外来診療では予防接種が大きなウエイトを占める業務となっています。疾病を治すことももちろん大事ですが、VPD(Vaccine Preventable Diseases)つまり「ワクチンで防げる病気」という考え方が広まり、予防接種を受ける子どもさんが増えているのです。私のような小診療所でも予防接種を受けに来られる方が最近では増加しています。昔と違い本当に多くの種類の必要なワクチンがあり、それぞれのワクチンにおいて受ける人の年齢、受ける時期また接種間隔などが詳細に定められています。種類と規定が多く、大変煩雑な業務となるわけです。そのためつい間違いをするリスクがあり、それは誤接種として厚生省から定期的に報告されています(表1)。同報告によりますと平成26年4月から同27年3月までにおいて実施された延べ予防接種回数41052024件のうち、5685件(10万件あたり13.8件、0.0138%)の事故がありました。5685件の事故の内訳をみますと最も多かったのは接種間隔の間違い(48%)、次に期限切れのワクチンを使用(16%)、不必要な接種(11%)と続いています。たしかに現場は混雑していること、また兄弟が一緒に受けに来た時は名前と顔がよく似ていること、このようなことから遺憾ながら誤接種をしてしまうリスクが常に潜んでいるわけです。もちろん当院では間違いのないように万全を期しています。それでも時々「ヒヤリ・ハット」と感じるようなきわどい体験をすることがあります。各診療所でも独自の工夫・対策を凝らしています。今回は当院で実施している間違い防止策について、他の医療機関であまり実施されていないものを紹介します。

     まず子どもさんを予防接種のために連れてこられた保護者(特に女性)が、「ワクチンを受ける意欲満々で来院された時」は少しばかり要注意です。というのは保護者が接種間隔をうっかり間違っているにもかかわらず、医療機関のスタッフに強い姿勢で誤ったワクチン接種を求める状況になっているからです。そこで、つい医療機関が保護者の迫力に押されてしまい、確認がおろそかになるという事態がおこるのです。意欲満々の母親には注意すべきというわけです。

     次に母子手帳の予防接種の記録をみる時に、間違いが起こることがあります。母子手帳は都道府県によって色々なデザインがあり、予防接種の記録形式も千差万別となっています。この違いに注意が必要なのです。つまり記録が数ページに分かれていたり、また記録が孤立した状態で離れたページにあったり、また記録がメモ用紙として重ね貼りされていたり、要は統一されていないバラバラ記録に出合うわけです。そのため大変分かりづらい記録となっており、残念ながら見落としてしまうリスクがあるのです。これでは不適切な予防接種をすることになりかねません。ことさら注意し再確認が必要なところです。

      最後に予防接種においては常に「指さし呼称」を実施し、事故発生を抑止しています。もともと指さし呼称は国鉄(現JR)によってはじめられた方法ですが、事故の発生確率を著明に下げることが知られています。基本はスタッフと医師のダブルチェックで声をかけ合って行うものです(図1)。はじめのうち指さし呼称をすることは、なんとなく気恥ずかしかったものです。しかしスタッフとの意思疎通がよくなり、自分自身が目と体を使うので緊張気分が深まり大変気合いが入りスムーズに予防接種ができ、誤接種の予防につながります。

      以上のようにして当診療所では、予防接種業務を毎日緊張して実施しております。

      次に個々の予防接種ワクチンのうち水痘ワクチンをとりあげ今回、復習してみました。現在、日本および米国でも日本人の高橋理明(1928-2013)先生が1972年に開発したOKA株ワクチンが使用されています(写真3)。もともと水痘ワクチンは白血病などのハイリスク児を対象として開発されたものです。ですから、ほんの10数年前までは健康児への接種はあまり勧められていないワクチンでした。昔の育児書には「水痘は軽ければ自宅安静で治しましょう」と書かれていました。しかし水痘は重症化すると大変予後の悪い疾患であります。ほとんどの人が受けているMR(麻疹・風疹混合)ワクチンにより、麻疹の死亡者は激変したのに対し、水痘による死亡者数は変化がありませんでした(図2)。そのため2004年からは、とうとう水痘による死亡者数が麻疹による死亡者を上回る事態となりました。ようやく近年になって考え方が変わり、水痘ワクチンの目的を低年齢の子どもさんの水痘数を減少することにおかれました。やっと日本でもこの目的に従い2014年10月に水痘ワクチンが定期接種に組み入れられました。ここに欧米とのワクチンギャップが少し解消されたわけです。思えば日本初のワクチンが外国で多く使われ、本家では使われなかったという皮肉な現象がなくなったのです。1996年の米国における定期接種化の導入に遅れること、実に18年でありました。ただ幸いというか、米国で先行した有効的な実施法というお手本があったので我国では教訓を生かすことができ、水痘発症阻止の成果が得られています。例えば札幌市における水痘発症状態をみると分かります(図3)。2017年の水痘発症数(図3の赤色の部分)は、ここ数年のなかでは最少でありました。私のような小診療所でも以前は年中水痘の人が来院していましたが、最近はめっきりと少なくなったことを実感しています。これは水痘ワクチンによる目ざましい効果と思います。

     では、水痘ワクチンの具体的なスケジュールです。現在、神戸市では1才の誕生日の前日から3才の誕生日の前日の子どもさんがワクチン接種の対象となっています。2回接種が必要であり、標準的には生後12ヶ月から14ヶ月までに1回目の接種を実施し、2回目は1回目の終了後6ヶ月から11ヶ月の間隔を置いて接種します(1回目接種から3ヶ月以上の間隔をあければ接種は可能)。ここで注意すべきことは1才未満は対象になっていないこと、また3才の誕生日の前日までに2回目を終了する必要があるということです。2回接種が必要とされている理由は水痘ワクチンは1回接種で約77%、2回接種で約95%の感染防御効果があるからです。また3歳までというのは水痘ワクチンの目標が低年齢層における水痘患者を減らそうということに置かれているからです。しかし2回接種を受けた子どもさんでも10%程度が水痘にかかります(これを接種後罹患、Break Through Varicallaといいます)。ただ、これらの人はみな軽症であることがわかっています。

     次に水痘ワクチンを受けられない場合があります。まず先ほども述べた通り、1才未満の乳児では原則水痘ワクチン接種は認められておりません。もし水痘感染歴がないお母さんから生まれた1才未満の子どさんがいたとします。その乳児がハイリスク乳児であれば水痘にかかると重症化の恐れがあります。しかし水痘ワクチン接種は1才未満のため受けられません。そこで治療としては水痘接触後72時間以内ならばグロブリン製剤の投与予防を考慮すべきであり、さらに治療としては抗ウイルス薬の使用が必要となります。ただ、この予防と治療はハイリスク児を対象としたものであり、健康な児ならば抗ウイルス薬の処方でよいとも考えられています。

      次に水痘ワクチンが受けられない場合としては、ステロイドの治療を2週間以上受けている人、白血病の人があります。これらの人では接種を避けるべきないしは制限があるとされています。そのため治療としてはワクチンによりも抗ウイルス薬を使用することが良いとされています。

     次に水痘ワクチンの緊急接種ということについてです。まだ水痘に罹っていない子どもさんが水痘の人に接触した時、72時間以内に水痘ワクチンを接種すれば、ほぼ100%感染を阻止できるとされています。自然に水痘ウイルスに罹った時には14日間程度の時間をかけて(これが潜伏期となるわけです)ゆっくりと感染が進行します。これに対しワクチンはすぐに感染を成立させて直ちに免疫応答を開始させるのです。ですから72時間以内なら直ちに人工的感染が引き起こされ、自然感染によるプロセスよりも速くて効果的なので緊急接種が有効というわけです。

     最後に大人における水痘ワクチンについてです。その前に水痘感染症には水痘と帯状疱疹の二つの発病形式があることを理解しておく必要があります。子どもの時には水痘として全身に皮疹が出現し、治癒した後には水痘ウイルスは脊髄神経に一生潜むことになります。ところが年をとって何らかの理由、例えば妊娠、がん、免疫力低下などがあると再び潜んでいた水痘ウイルスが再活性化し再出現してきます。この時、末梢神経に沿って帯状に皮疹が出現したときは帯状疱疹、全身に出現したときは水痘という病状を呈します。特に高齢者の人が帯状疱疹にかかるとその痛みは強く、しかも長期にわたり続き、大変苦痛な疾患となります。以前は大人・高齢者の水痘と帯状疱疹は少ないと考えられていました。ところが高齢化社会になって水痘や帯状疱疹を発症する高齢者が増えてきたのです。そこで2016年3月からは帯状疱疹の予防接種として50歳以上の人では水痘ワクチンが正式に認可(ただし任意接種)されました。何と、子どもの時に接種された水痘ワクチンが水痘予防だけでなく、帯状疱疹の予防にも効果があるのです。ただ多くの大人は水痘の既往歴についてはあいまいなことが多いものです。しかし水痘の既往があってもなくても全く問題はありません。特に既往歴のない大人の方、なかでも妊娠を考えている女性(ただし接種前1ヶ月と接種後2ヶ月の避妊が必要)、そして全ての50才以上の人においては帯状疱疹になることを阻止するために接種が望まれるところです。くりかえしとなりますが50才以上の方は,あの痛い神経痛に苦しまないために水痘ワクチンを受けるようにして下さい。

     

     

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    表1 予防接種時の事故について 

    第7回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会による

    http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000102892.pdf#search=%27%E4%BA%88%E9%98%B2%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E6%99%82%E3%81%AE%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%27

     

     

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    図1 指さし呼称 

       中央労働災害防止協会のHPから引用

      http://www.jisha.or.jp/campaign/musaigai/img/18wfree_1.jpg

     

     

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    写真3 水痘ワクチン

        田辺三菱製薬株式会社のHPから

     

     

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    図2 みずぼうそう・はしかによる死亡者数(1999年-2015年)

       BIKENのHPから引用

       http://www.mizuboso.jp/about/index4.htm

     

     

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    図3 札幌市における水痘(定点あたり報告数)

       札幌市のHPからの引用

       www.city.sapporo.jp/eiken/infect/trend/graph/l604.html

     

     

     

     

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