機器の故障

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機器の故障

  • 2017.12.15

    今年も押し詰まった12月のある日、突如として診療所にある3台の機器が立て続けに故障しました。それは電子カルテ(コンピュータ)、冷蔵庫、それに心電計です。今やこれらの機器が片時とも無しでは、診療がお手上げ状態になってしまいます。特に電子カルテのトラブルは患者さんを全く診ることができない状況となってしまいます。また冷蔵庫には各種の予防接種ワクチンが零度前後で保存されており、常に適正温度範囲内で保存しないとワクチン効果に問題が出てくる恐れがあります。それ故、大至急、何とかしなければならない状態となりました。

    電子カルテについてはコンピュータ本体のハードディスクの故障ということで数時間かけての復旧作業が必要でした。作業が終了するまで何も仕事は出来ないので大変です。冷蔵庫は10年間ぐらい問題なく働いてくれていたのが、突然調子が悪くなりました。危機管理上、常に冷蔵庫内の温度モニターをすべきということ承知していたので故障の発見が早く、遅滞のない対応ができました。医師会の医療安全講習会などで冷蔵庫の温度モニターが重要なことを学んでいたので、日頃の勉強と備えが役に立ったところです。やはり積極的に講演会には参加すべきと思いました。心電計は訪問診療の時に突然、使用ができなくなりました。昨日まで何のトラブルもなかったのに大いに困ることになりました。おそらく心電計の接続コード不良による不具合と思われます。往診先という、いわばアウェイの場所での突然の機器のトラブルに見舞われると慌ててしまいます。どうにも立ち行かないことになってしまいました(業者の人に相談すると、コードの不良ではなく接触電極の老朽化ということでした)。

    とにかく、年の瀬になって機械のトラブルが続き、少しストレスが溜まることとなりました。そんな中、外出すると初冠雪をいただいた六甲の山々が目に入ってきました。本格的な冬の到来を感じました。そして神戸の街に出てみますとクリスマスの飾りつけに出合うことが出来ました。「ホワイト・クリスマス、近し」という気持ちを抱き、何やら暖かい感情を持ち、気分が変わることになりました。

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    写真1 初冠雪で雪化粧した六甲の山並み 

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    写真2 近くの駅のクリスマスの飾りつけ

    さて寒い季節とともにインフルエンザをはじめとする感染症の患者さんが、外来では増えてきます。冬の代表的な感染症、インフルエンザはまだ爆発的流行にはなっていません。国立感染症研究所によって12月6日に公表された2017年第48週 (11月27日~12月3日)の日本全国の流行状況をみましても、それほどの流行とはなっていません(図1)。それでも、ここ数日インフルエンザの人が数人受診されました。また嘔吐、下痢などの消化器症状を訴える子どもさんも数多く来院されます。どうやら、冬の感染症、その本番が目の前に来たような気がしています。

    今回は、小児の急性胃腸炎について最近公開された診療ガイドライン2017(写真3)を読み勉強しました。以前、本ブログでも本診療ガイドラインのあらましを紹介したことがあります。それはガイドライン作成委員のお一人、上村克徳・先生の講演会を拝聴する機会があり、それを報告したものでした。ただ、その時は現在のようにガイドラインの全貌が書物として公表される前であったため、はっきりと全貌を掴むことは少し困難でした。ようやく今回、全文が読めるようになったのでお話しします。

    本ガイドラインは日本小児救急医学会に設けられた診療ガイドライン作成委員会によって編纂されたものです。委員の顔ぶれをみますと多くの医師の努力によって練り上げられた内容であることが伺えます。従来、小児科医個人の長年の臨床経験に基づき、色々な治療法がなされてきました。そこへ、このようなガイドラインが出現すると、これまで様々であった治療方針が質の高い一つの治療法に纏められていくことが期待されます。ですから実地の臨床医にとって参考になり、また頼りにもなる存在です。特にガイドラインでは推奨度の表現を図2のようにしています。例えば1-Aということは、強い推奨ができ、強く確信があるということになるわけです。この推奨度の表現は大変分かり易く、きわめてクリアカットなものです。というわけで一気呵成に読破し、日々の臨床に生かすようにしているところです。

    なかでも私個人が興味深かったことを三つ、次に紹介したいと思います。

    まず「便の迅速ウイルス抗原検索は治療方針の決定に有効か」という件についてです。下痢や嘔吐を訴えている子どもさんと親御さんを目の前にしたとき、誰もが可能ならば病気の原因を知りたいと思うのが人情でしょう。親御さんのなかには「ノロウイルスかもしれない」と不安感を抱いていることもあります。そんなとき便を用いて迅速に(10-15分程度)下痢の病原菌が分かれば、少しは安心をされるものです。最近ではノロウイルス以外でもロタウイルス、アデノウイルスまた大腸菌O157というような病原菌についても迅速検査法があり、検査をすることにより原因が分かれば患者さんは何となく気が落ち着かれるものです。ただここで最も大切なことは、適切な初期治療が何よりも優先されるということです。便の迅速検査はその次という点です。つまり脱水の治療が優先されるべきであり、原因の特定は必要ないとガイドラインは記載しています。この考え方が推奨度1-C、つまり強く推奨できるが、確信は限定的であるということです。

    次は「急性胃腸炎の小児に対して制吐剤は有効か」ということについてです。制吐剤とは「吐き止めの薬」のことであります。子どもさんの制吐剤にはトンペリドンとメトクロプラミドという二つの良く処方される薬剤があります。ところが今回のガイドラインによりますと、この両者の薬の有効性をはっきりと示した確証レベルはそれほど高くはないとされています。結論的にいえば、「同薬剤を処方してもよいが積極的な推奨はしない」というものです。たしかに多くの子供さんはこれら薬剤を処方しなくても、たいてい短期間に症状が消失していきます。それどころか副作用 (ふらつきという錐体外路の症状、また心電図異常などがあります)が時に出現することがあります。従って一律にこれら薬剤を処方するのではなく、有効性と副作用のバランスを考えたうえで慎重に投与する必要があるとガイドラインはしています。この推奨度は、使用しても良いが積極的な推奨をしない(0-C)というものであります。

    最後は「急性胃腸炎の小児に対して漢方薬は有効か」ということについてです。一般に子どもさんは通常の薬剤はもちろん、漢方薬の服用はさらに難しいという先入観念があると思います。まして急性胃腸炎を発症している子どもさんには食欲低下もあり、いっそう漢方薬の服薬は困難と考えられます。実は私自身も最近までそのように考えていました。しかし服薬の工夫をすれば、案外子どもさんは素直に漢方薬を服用してくれるものです。そんなわけで私は最近では漢方薬をよく子どもさんに処方しております。なかでも五苓散は子どもさんの胃腸炎に対し(成人に対しても)比較的よく効くという印象を受けています。しかしながら今回のガイドラインでは「漢方薬が有効であるとするだけのエビデンス(確証)がなく、まだ推奨できるか否かを決めることができない(0-D)」とし、推奨度を決めかねています。漢方薬については今後、質の高い臨床研究が望まれるとガイドラインはしているのです。将来的に漢方薬については臨床経験を積み重ね、また文献を読み、慎重な処方をしていくべきであると私も考えています。

    以上、「小児急性胃腸炎 診療ガイドライン2017」の中から三つだけを選んで紹介しました。その他にも大変参考になる興味深い事項が記載されています。紹介した3件に限らず、その他の様々な臨床事項については概略をもちろん承知はしています。しかし、それらを全て明確に詳細にわたり理解することは不可能であります。ところがガイドラインが明確な解説がなされており、最新の知識を再確認することが出来るわけです。さらに出されたガイドラインの内容が全て正しいというわけではなく、今後の臨床の場で大いに論議が積み重ねられ、より質の高いガイドラインとしていかねばなりません。このようにしてこそ真のガイドラインが創り上げられ、臨床の場に生かされるということが重要であります。

     

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    図1 インフルエンザ流行マップ 国立感染症研究所による

    2017年12月6日現在

    https://www0.nih.go.jp/niid/idsc/Hasseidoko/Levelmap/flu/new_jmap.html

     

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    写真3 小児急性胃腸炎 診療ガイドライン2017

     

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    図2 図推奨度の表現

    小児急性胃腸炎 診療ガイドライン2017から引用

     

     

     

     

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