秋の深まり

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秋の深まり

  • 2017.11.17

     11月も半ばを過ぎ去り、少し寒気を帯びた日々となってきました。子どもさん達は運動会、音楽会などの行事に元気に頑張っている様です。外来患者さんの動向から、今年は今のところカゼをひく人が少ないような気がします。ただインフルエンザの予防接種の供給量が少ないためか、少し慌てて接種に来る方が多い印象があります。予防接種も大切ですが、インフルエンザに対しては過労を避け、手洗い、うがいを励行してください。

     今回、所用があって山口県の岩国へ行く機会がありました。岩国はこれまで新幹線で通過するだけで降り立ったのは今回が初めてです。新幹線のぞみで広島まで行き、こだまに乗り換え新岩国駅に降りました。新神戸から新岩国まで直通の新幹線列車がないことを初めて知りました。新岩国駅の周辺は、のどかな風景で秋の訪れを感じました。そこから車で約10分のところにある錦帯橋を訪れました(写真1)。橋の上から川を見ると、きれいな錦川の清流、そして水の上には鵜飼の船が係留されていました。たまたま訪れた日に錦帯橋シンポジウムという会が開催されており、錦帯橋の周囲は多くの人々で賑わっていました。同シンポジウムは錦帯橋を世界文化遺産に登録することを目的にしていると聞きました。さらに錦帯橋の付近を歩き、ロープウェイに乗り山の上にある岩国城を見学しました。天守閣からの眺望はまことに素晴らしく、遠くは瀬戸内海、また米軍の岩国基地もよく分かりました(写真2)。また初めて十月桜という花(写真3)のあることを知りました。帰宅して調べたところ十月桜は4月と10月の年2回開花するバラ科サクラ属の木とのことです。別名を冬桜といい、花は白というか、淡いピンク色で大変可憐でした。初めて訪れた土地で初めての花に巡り合い、たいへん豊かな気分となり神戸へ帰りました。

     さて今回は漢方の実践的なセミナーに参加する機会がありました。テーマは在宅医療・緩和ケアであります。最近、漢方関係・東洋医学の講演会にはよく出かけています。その理由は次の通りです。 西洋医学はエビデンスを重視し、疾病から少しでも早く解放させ、目にみえる治療効果を出そうという臨床医学です。例えば、降圧剤は血圧を下げ、血糖下降剤は血糖値を下げる等というのが西洋医学です。一方、東洋医学は西洋医学のような目にみえる即効性の効果は、原則として乏しいものです(もっとも漢方薬は本来、急性疾患に対する処方であり、即効性の漢方薬もあります)。ところが大変面白いことに、西洋医学では十分な治療効果が得られない患者さんにおいて漢方薬が著効することが時にあります。難治性の病状が漢方薬で改善することを、しばしば経験するところです。ですから患者さんに対し漢方薬を処方しない手はないといえるでしょう。ただし、それには漢方薬を正しく理解し、証などの東洋医学的な診断を正しく行うことが大切です。漢方薬は正しく処方する必要があるのです。あるアンケートによりますと医師の約80%が漢方薬を処方した経験があると報告されています。医師も漢方薬の効果を認めており、現在漢方薬はある程度大きな位置を臨床医学で占めています。

     このように漢方薬の魅力を理解しているので各地の東洋医学関係の会に時間があれば顔を出している昨今です。最近も小児の漢方、また救急医学の漢方を学ぶ機会があり、それなりに面白い知識を得ました。そんな折、在宅医療・緩和ケアにおける漢方薬をテーマにした講演会が目にとまりました。少し目線を変えたテーマなので如何なる内容かと興味を惹かれました。参加する前に以前少し取り組んだ在宅の漢方療法を復習し、講演会に臨みました。 講師は3人の先生でいずれも漢方にはそれなりの経験のある方々です(図1)。その内容を一言で纏めると図2の通りです。図2の上から順番にいいますと「どんな症状に漢方を使うといいのか?」、つまり症状に着目し、これを軽快させる漢方薬処方に関しての話です。次に「終末期での漢方薬の有用性」が示され(図2の中)、そして「漢方薬を上手に服用していただくコツ」が紹介されました(図2の下)。このように三点について実践的な話が展開され、患者さんの人生・生活を最後まで支えることの大切さが述べられました。そのすべてを紹介することは不可能なので、特に印象的であったことを以下に紹介することにします。

     まず「どんな症状に漢方を使うといいの?」であります。もちろん具体的な漢方における個々の処方例については、個人的にも色々と承知はしています。それでも講演会に参加すると新しい処方に出会うことがあります。今回は酸棗仁湯(さんそうにんとう)という薬をあらためて見直すことになりました。これは不安が強く心身が弱って寝られない人に有効な薬剤です。これまでは抑肝散を処方していましたが、体力の低下した高齢者において本薬の処方を考慮してもよいと思いました。

      次に終末期における漢方についてです。ここで最も印象に残ったことはスピリチュアルケアと漢方薬の関係についてでした。スピリチュアルケアを理解するにはスピリチュアルペインを知る必要がありますが、これは「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛のこと」であります。つまりスピリチュアルペインとは終末期の人が持つ心の痛みであります。このスピリチュアルペインを緩和することをスピリチュアルケアというのです。漢方薬、なかでも補剤とされている幾つかの薬剤がスピリチュアルケアに有効ということを再認識しました。有効な補剤には幾つかあり(いずれも比較的有名な漢方薬です)、これらを上手に終末期において処方することが必要です。在宅医療において漢方の補剤を上手に処方し、スピリチュアルケアを実施していくべきだとあらためて強く考えました。

     最後は漢方薬を上手に服用するコツです。日常臨床で漢方の処方にあたり、「苦いけど、飲みにくいけど頑張ってね」などと患者さんについ言ってしまいます。しかしこれはNGであり、大事なことは「工夫して飲もうね」と言うことなのであります(図3)。さらに患者さんには漢方薬の有効性をはっきりと説明することが大切ということです。医師が遠慮がちに、また不明瞭に説明すれば患者さんは絶対に服薬に応じてくれないものです。まずこれをしっかりと理解したあとは漢方薬を上手に服用するコツを患者さんに伝える必要があります。今回も色々な方法がコツとして紹介され、なかには採用してみたい方法もありました。それは、漢方薬は何と混ぜ合わせても基本的に問題がないこと、マヨネーズは味をマスクするので有望・有効なこと、リンゴジュースは比較的味がよいこと、ゼリーでは漢方薬をトッピングして先に口に入れてしまうこと(後からゆっくりとゼリーを食べること)、これらが印象に残りました。ただ漢方薬に対する味覚は患者さん個人で千差万別です。ですから1人1人においてきめ細かい服用方法を模索して決めていくこと、これが大切です。ただ「良薬口に苦し」、「だから辛抱しなさい」と言うだけでは不十分といえるでしょう。

     以上のように在宅医療の現場にいる臨床医にとって幾つかの貴重な知見・情報が得られました。今後もまた、さらに色々と研鑽を積み、より良い漢方薬の処方をしていきたいと考えました。

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    写真1 錦帯橋の遠眺

     

     

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    写真2 岩国城の天守閣からみた眺望

     

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    写真3 十月桜の花

     

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    図1 講演会の講師 当日配布されたレジュメから引用

     

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    図2 講演内容のあらまし 当日配布されたレジュメからの引用

     

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    図3 漢方薬を上手に服用するコツ 当日配布されたレジュメからの引用

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