十三夜

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十三夜

  • 2017.11.10

     すっかり秋となりました。空気が澄んでおり、高層住宅のお宅に訪問診察にうかがうと、寒空の下に広がる神戸港が眺望できました (写真1)。朝夕は寒いので皆様、風邪には気を付けてください。今年はインフルエンザの予防接種が不足しています。そのため9歳以上の人では1回だけの接種を国がお願いをしています。例年であれば13歳以上になると1回の接種ですが、ワクチン不足しているため9歳以上と年齢を引き下げたわけです。ちなみに米国では9歳以上の人は1回だけの接種であります。また1回接種と2回接種において接種の効果に差がなかったことも報告されています。とにかく無理をせず、早く床について過労を避け、予防接種を受けておきましょう。

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    写真1 寒空の下の神戸港

     

     十三夜(じゅうさんや)とは9月の十五夜の一ヶ月後くらいに暦の上で巡ってきます。9月15日の十五夜は大変有名であるのに対し、十三夜の知名度は低いでしょう。ただ十五夜は天候の悪いことが多く、むしろ十三夜の方が晴れ渡ることが多いということです。昔から十五夜は中秋の名月、十三夜は「のちの名月」といわれ、両方の月見をしないことは「片見月」といわれました。もともと、月見は中国から伝わった風習で平安時代には習慣として広く行われていました。ただ十三夜は日本独特の風習であります。昔は栗や豆を供えたので栗名月また豆名月とも呼ばれていました。今年の十三夜は11月1日でした。皆様、十三夜の月をみられましたか? 

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     このように秋が深まり勉学には最適の日々がやってきました。学会、講演会も今やシーズンたけなわという状況です。各地において色々と開催されています。これら全てを参加することは、とうてい不可能であります。10月に少しタイトに講演会に参加したところ、無理が重なったため久し振りに急性咽頭炎を発症し、10日間以上も嗄声が続いてしまいました。患者さん方には「医者の不養生」とか「先生、御大事に」などと言われ、心配をかけることになりました。嗄声ではすぐに患者さんに分かってしまうので次回は分かり難い病気になろうかと皮肉なことを考えたりしました。ようやく概ね体調が戻り、無理のない範囲で通常の臨床医の業務に就いています。

     

     今回、勉学したのは本年の6月に日本小児救急医学会がとりまとめた「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017」です(写真2)。本ガイドラインは2部構成となっており、第1部は小児急性胃腸炎、第2部は小児急性虫垂炎であります。今回は緊急性が高く、しかも日常診療上で時に診断が難しい急性虫垂炎について第2部を読んで造詣を深めました。小児の急性虫垂炎は症状が否定形的なこと(したがって診断が難しい)、子どもさんが上手に症状を訴えられないこと等のために見逃してしまうことがあります。それゆえ実地医療としては常に急性虫垂炎を疑いながら、日々患者さんに接しているところです。このような現状に対し、本ガイドラインは極めて有用であります。虫垂炎に対する迷いをある程度断ち切ってくれ、大変頼りになると感じました。

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     まずガイドラインには虫垂炎スコアリングが呈示されており、このスコアリング(表1)を利用すると臨床経験の少ない医師でも診断がつけられると期待されます。虫垂炎スコアには2種類のものが示されています。どちらの虫垂炎スコアを利用してもよいのですが、私自身は念のため両者を併用したいと考えています。まず診察所見や血液検査を用いてスコアリングします。次にスコアリングした点数の評価についてです。これは図1に示した通りで点数評価は3点以下、4~6点、7点以上の3群にわけられます。3点以下では帰宅可で明日再受診すること、4~6点では二次入院施設へ送ること、7点以上では手術・画像診断が可能な病院に送ること、以上のように評価、分類されます。これまでは二次病院へ送るか否か、迷ったものですが、これである程度対応がスムーズにいくものと思います。一般に私のような診療所では3点までの患者さんを正しく診断することが重要であり、4点以上の患者さんは二次施設以上の医療機関に転院していただくことになります。

     次に本ガイドラインでは「画像検査のうち超音波エコー検査を第一選択とする」ということが明示されています。これはCT検査には被爆がありますが、超音波エコー検査は被爆もなく簡便な方法であるからです。子どもさんの腹痛において安易にCT検査をしないという方向性が示されたのです。ただ超音波エコー検査は実施に当たり少しコツがあり、習熟する必要があります。私もあらゆる機会において、その習得に努めているところです。

     最後に注目すべきこととして虫垂炎と診断した患者さんに対し抗菌剤を投与し、その2ないし5ケ月後に手術をするという待機的虫垂切除術がひとつの治療法として示されました。ひと昔前の感覚からいうと「急性中耳炎と診断されたなら、すなわち緊急手術」というものです。しかし緊急手術には合併症が発症しやすいため、小児外科医のあいだでも待機的虫垂切除術を選ぶ医師が増えているのです。もちろん壊疽性虫垂炎、虫垂穿孔さらに腹膜炎を合併した患者さんでは緊急手術の適応となります。これに対し限局性の虫垂炎では待機的虫垂切除術が選択されることになります。ガイドラインによりますと総入院日数は待機的虫垂切除術の方が長いものの、手術時間は短く、術後合併症が少ないのです。このように子どもさんの急性虫垂炎に対するガイドラインが公表されたことにより治療の標準化が進むと期待さることになりました。第一線にいる小児科医は常に新しく出されるガイドラインに注目している必要があります。

     

     以上のようにエビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017は臨床家にとって大変有意義なものです。ただ本ガイドラインの序文にもあるように、ガイドラインはエビデンスに基づいて作成されるものとはいえ、実地臨床の現場ではガイドラインとは乖離することもあります。ガイドラインを診療の第一歩とし、個々の子どもさんに適した対応が必要と考えられます。

     

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    写真2 日本小児救急医学会診療ガイドライン作成委員会編

    http://www.convention-axcess.com/jsep/

     

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    表1 虫垂炎スコア

     

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    図1 スコアリングした点数の評価

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