世界脳卒中デーから考えたこと

078-861-0860

トピックス

topics

診察予約はこちら

世界脳卒中デーから考えたこと

  • 2017.10.07

     秋らしい日々がやってきました。町の中から少し寒いぐらいの風が吹き抜けていきます。前回のブログでも紹介した公園のコスモスが、さらに咲き誇っていました(写真1)。正直、朝夕の冷気は少し体にこたえるぐらいです。反対に日中歩くと汗が出てきて困ることもあります。薄着だけでは寒く、着衣の選択も難しいところです。ただ勉学には好適な環境です。秋の夜長は灯火のもとでの書見には最高です。能率も上がります。というわけであれこれと書物を読んでいます。

     

     さて来たる10月29日は世界脳卒中デー(World Stroke Day)です。2006年10月に国際脳卒中学会と世界脳卒中連盟が統合して世界脳卒中機構(World Stroke Orgaization、以下WSO)となり、この時に10月29日を世界脳卒中デーとすることを決定されました。したがって生まれてまだ10年余りと日が浅いため、一般の方々の認知度は低いところです。そこでWSOについて少し紹介しようとそのホームページ(http://www.world-stroke.org/)を閲覧してみました。ただ英文によるものであり、一部だけを読解してみました。今回、その内容を紹介してみたいと思います。

     

     WSOが目的とするところは「脳卒中の世界的な蔓延に対し、今すぐ行動を起こすこと」であります。また「脳卒中の予防・治療・長期的ケアを通じて脳卒中が社会全体に与える負担を減らすこと」をWSOの使命としています。また2014年から2016年までは女性と脳卒中にスポットをあてた「アイアム・ウーマン:脳卒中になったら」というキャンペーンがあったことをホームページにより知りました。ここで女性の脳卒中という点が気になりましたので今回少し調べました。

     日本人における脳卒中の年代別性別患者数は厚生労働省によりますと図1の通りです。本図をみると分かりますように男女とも毎年、患者さんの数は幸いにも低下しています。ところが平成26年を除き、常に女性の脳卒中患者さんが男性の患者さんより少し多いことが分かります。つまり脳卒中はわずかながらも女性に多い傾向があるのです。また少し古いデータですが、平成23年の厚生労働省による男女別・年齢別の全国脳卒中患者数をみますと男性の脳卒中は70~79才にピークがあったのに対し、女性の脳卒中は80~89才にピークがあったということです(図2、ベネッセスタイルケアのホームページより引用させていただきました)。つまり女性の脳卒中は男性の脳卒中よりも高齢の人に多い傾向にあるわけです。WSOのキャンペーンでも脳卒中の主要危険因子は、男性よりも女性に多いこと、脳卒中になった女性は男性に比べて十分な治療を受けられないこと、さらに介護者となった女性では精神的ストレスを感じることが多い、等々の諸問題を提起しています。つまり「女性は脳卒中弱者」なのです。またアメリカのケンタッキー州の7710人の脳卒中の解析でも、女性の脳卒中が57.2%とやはり男性より少し多いという結果でした。

     このように「女性は脳卒中に対し男性よりもリスクが高い」と考えるべきと思います。私自身は正直なところ脳卒中の男女差に、これまであまり関心を払っていませんでした。今後は脳卒中の男女差を意識することになると思います。

     このように男女差を意識してからは、何かにつけ「医学における男女差」に注意をするようになりました。そこで気が付いた幾つかのエピソードをお示ししてみたいと思います。

     

     先ず少し気になるニュースが入ってきました。それは国立がん研究センターが最近発表した「がん罹患数の予測」というものです。ここにも男女差が示されています。いうまでもなく日本人における死因の第一位はがんであります。そのためがんに対して我々は否応なしに関心を持たざるを得ません。今回の報告には正直、「どきり」とさせられるものがあります。それは2017年において新たにがんと診断される人は101万4000人(男57万5900人、女43万8100人で女性の方が少ない)と予想され、年ごとに増加傾向にあるという内容です。増加の理由は、高齢者が増加したこと、そして診断技術の向上によると考えられています。ただ、がんが増加するということは人間が長生きした結果でもあり、また医学の進歩が背景にあるというところでもあります。ですから、あながち悲観することもないわけです。そこで男女別にみた検討です。まず多いと予想されたがんをみますと男性では胃、肺、前立腺、女性では乳房、大腸、胃となっています(図3)。このような男女差ががんにはあります。また男女ともに多いと予想されるのは大腸がんということが示されています(図4)。さらにがんで死亡するのは男22万2000人、女15万6000人と予想されております。以上のことから、がんについて男性は女性よりもがんのリスクが高いことがわかります。

     

     最後に日本の医師の男女差についてです。経済協力開発機構は2014年における各国の女性医師の比率を調査しました。これによると日本の女性医師の比率は20.3%であり、これは加盟35ヶ国のうち最低でした。他の先進諸国での女性医師の比率は、いずれも日本よりかなり高いものでありました。このことより、国際的にみて日本の医師数には男女差があることがわかります。女性の社会進出の著しい現在、今後は女性医師がより多くなることが予想されます。そのためには女性医師の働き易い環境整備が必要です。

     

    171006 1

    写真1 公園で満開のコスモス

     

     

    171006 2

    図1 年別性別にみた脳卒中患者数の状況  メディカルiタウンより

    http://medical.itp.ne.jp/iryou/byouki/nousocchuu/

    NTT東日本関東病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長兼任 

    井上 智弘(いのうえ ともひろ)先生の文献を引用させていただきました

     

     

    171006 3

    2 平成23年における性別・年令別にみた脳卒中患者数

    後遺症が残ることの多い脳卒中 

    ベネッセスタイルケアより引用させていただきました

    https://kaigo.benesse-style-care.co.jp/disease/stroke/

     

     

     

    171006 4

    3 男女別にみたがんの予測数

     

     

    171006 5

    図4 男女とも最も多いと予想されるがんは大腸がんである

     

     

    171006 6

    5 日本の女性医師は諸外国に比べて少ない

     

     

pagetop