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10月半ばを過ぎ

[2018.10.19]

 今年の10月上旬は、気温の高い日が多いという長期天気予報が出ていました。確かに10月上旬は汗ばむ日々が多くありました。しかし10月中旬になり、ようやく秋らしい日々となってきました。神戸港の上空にも秋らしい雲が出ていました。そして今月15日からはインフルエンザの予防接種が開始されました。街に出掛けましても少しずつ冬に向けての準備が進んできました。そして10月31日はハロウィンです。あちこちのお店ではハロウィンの飾りつけがされており、目が引かれるところです。

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写真1 秋らしい雲の漂う神戸港     写真2 幻想的なハロウィン

 

 今回はうつ病について勉強してみました。

 うつ病に関しては私自身が非専門医であり、それほど詳しいというわけではありません。しかし、その重要性については大変よく理解しており、折に触れて勉強するようにしています。また実地臨床の現場では常にうつ病を念頭に置いて患者さんに対応しています。この際、比較的参考にしているのがうつ病のガイドラインであります。そのガイドラインとしては2年前に日本うつ病学会が公開した「日本うつ病学会診察ガイドライン2016」があります(写真3)。同ガイドラインは臨床経験のある精神科医に向けたメッセージもありますが、精神科医以外の医師にも有益な情報を提供してくれます。これは大変助かるところです。それは精神科医でなくても、うつ病の基本的なポイントは医師であれば知っておく必要があり、ガイドラインには明確に呈示されているからです。また、うつ病は自殺に繋がることもあり、その対処を誤ってはなりません。そんなわけで現在、心して同ガイドラインに目を通しているところです。

 このように、うつ病のガイドラインを読み込んでいたところ突然、厚生労働省の「2017年度における労災補償状況」というニュースに接しました(10月6日の厚生労働省発表)。これは仕事が原因でうつ病などの精神障害にかかり、その人が労災認定を受けた状況の結果報告であります。ちょうど、うつ病について勉強している時であったので急に興味がわき、これについて詳しく検討してみました。

 まず労働者の精神障害による労災請求件数、決定件数そして支給決定件数の年ごとの状況についてです。その件数は図1に示した通りであり、これをみると分かるように労災の請求、決定、支給決定の件数はいずれも少しずつ増加しております。ここで最も注目すべきことは、平成29年度の支給決定件数は506人(図の右端)と過去最高に達したことです。506人と初めて500人を超えたことは、関係者に衝撃を与えたようです。このように労働者の精神障害は増加しつつあり、これは日本経済全体について深刻な影響があります。職場の産業医によるストレスチェックなどを活用し、職場環境の改善につなげたいと厚生労働省はしているところですが、早急な対応が必要です。

 そこで、これに対する対応を考えるために506人について少し詳しい内容の分析をしてみました。まず分かったことは506人のうち自殺、自殺未遂は98人を占めていること、約半数の人が30才未満の若い人であること、そして約1/3の人が1ケ月の残業時間が100時間以上であることが分かりました。このことから若い人が働き過ぎて精神障害を発症していることが伺えます。

 次に506人の発症原因についてです。多いものから「嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた」(88人)、「仕事内容などの変化」(64人)、「悲惨な事故や災害の目撃」(63人)。「上司とのトラブル」(22人)でありました。これをみると分かるように以前は脳・心臓疾患で労災認定を受ける人が多かったのですが、最近は精神的疾患によるものが多いというのが現状です。

 最後に506人の業種別にみた分析です。これは製造業が最も多く、次に医療・福祉、そして卸売業・小売業と続いています。ここで少し驚いたのですが医療・福祉が第2位という事実です。たしかに医療従事者は医療現場で常に精神的緊張を強いられます(図2)。当然ながら不可抗力的ともいえる小さなミスでさえ(いやミスでなくても)、責任を追及されることがあります。人々を救う立場にある医療従事者は常に心身ともに健康でなければなりません。しかし現実は、それに程遠いといえるでしょう。少し以前ですが、日本医師会が「勤務医の12人に1人はうつ状態」とし、頑張りすぎずに休養をとることを勧めたことがあります。それでも過重労働による医師のうつ病・自殺はよく報道されます。医師の過労死について「東京過労死を考える家族の会」が検討していますが、現場の医師は過重労働に追いつめられている状況がよく理解できます。一般に医師は真面目な人が多く、「休息も仕事のうち」と考え、休養をとることが必要です。医療従事者はいま一度自らの過重労働について考えるべきと思います。

 それにしても残念ながら今後も精神障害による労災認定の件数増加が止まらないように思えてなりません。それは現代社会では様々な要因で過重なストレスが多く、益々精神疾患が増えると予測されるからです。事実、厚労省の患者調査によりますと精神疾患の患者が増えているこが示されています(図3)。

 そこであらためてうつ病について対応の第一歩、基本的原則を考えてみました。最初にお話ししたように日本うつ病学会が昨年に公開したうつ病治療ガイドラインを傍らに置き、内科系診療所における日常対応を考えているところです。

 よく言われているようにうつ病患者さんは身体疾患を訴えて来院することがあります。一方、糖尿病などの生活習慣病の人をはじめ、疾患の人などではうつ病を合併していることが多くあります。先日、神戸医療センター中央市民病院の精神・神経科の松石隆先生の講演において「身体疾患の治療・経過中に抗うつエピソードを呈するものとして心筋梗塞、糖尿病、脳卒中がある」と聴きました。特に「うつ病が糖尿病では一般の人の2~3倍あること」、また「糖尿病患者の10~30%がうつ病を呈している」とのことでした。さらに松石先生によりますと、「アルコール依存症とうつ病は併存することが多く、飲酒を続けながらのうつ病治療は不可能である」ということです。精神科の非専門医は、ともすれば身体疾患に目が向いてしまうものです。しかし、うつ病を常に考慮して日常診療にあたることが重要なことを再認識したところです。そして、うつ病を少しでも疑った時、いわゆる2項目質問法が有効です(表1)。これは精神科非専門医であっても比較的簡単にできる2つの質問です。同質問法は以前から日本医師会でも推奨されており、感度は90%と極めて有用なことを今回あらためて確認しました。もちろんこれまでも2つの質問を患者さんに聴いていました。今後は定期的に質問していきたいと考えているところです。

 

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写真3 うつ病治療ガイドライン 第2版2017/6/19

日本うつ病学会 

ISBN-10: 4260032062

 

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図1 精神障害の請求件数、決定件数、支給決定件数

厚生労働省のHP 平成29年度「過労死等の労災補償状況からの引用

https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/H29_no2.pdf

 

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図2  業種別にみた精神障害の決定件数

出典は図1と同じ

 

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図3 厚労省の患者調査 精神疾患の患者が増えている

厚生労働省のHPからの引用

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html

 

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表1 日本医師会 日医ニュース健康プラザNo.454から

http://dl.med.or.jp/dl-med/people/plaza/454.pdf#search=%27%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85++%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%82%81%E3%81%AA%E3%81%84+%E8%90%BD%E3%81%A1%E8%BE%BC%E3%82%80%27

 

東京過労死を考える家族の会

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000189107.pdf

 

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