メニュー

秋の日々 

[2018.10.12]

  10月に入り、またもや台風が日本列島をかすめ過ぎ去りました。今回は日本を直撃縦断したのではないので直接の被害は少なかった模様です。それにしも週末ごとの台風の襲撃は観光や農業をはじめ、色々な分野での影響が避けられないところです。皆様方のお住まいのところはいかがでしたでしょうか?

台風一過の空を見上げると秋らしい雲が見られました(写真1)。

181012.6

写真1 秋らしい雲

 

  さて時候の良くなった今、時間があれば机に向かっています。以前は学会や講演会に自らの足を各地に伸ばして積極的に参加していきました。しかし年とともに遺憾ながら自宅にこもっての勉学時間が増えてきました。今回も、また感染症について触れてみました。確かに内科外来での日常診療では生活習慣病なども大きなウエイトを占めています。しかし、それでも感染症の立ち位置は重要であると何時も思います。そんなわけで風疹と梅毒について取り組みました。

  先ず風疹です。またもや風疹が現在、関東地方を中心に流行しています。10月10日現在、累計の風疹患者数は952人となり昨年1年間の10倍を超えました。10月に入り、新規の患者さんは東京(40人)、神奈川(21人)、千葉、埼玉(16人)と首都圏に集中して発生し、衰えることなく報告されています。このような実状に対し、首都圏をはじめ全国の自治体では風疹予防接種の補助金助成をしています。詳しいことは、お住いの役所に問い合わせるようにして下さい。

  9月23日までに風疹患者として報告された770人を対象とし、国立感染症研究所が分析調査した報告があります。この770人という患者数は、風疹届出が全数報告になった2008年以降では第3番目となるハイペースな発症数であります(図1)。先程も述べたように首都圏つまり人口集中地域を中心とする流行であることが特徴です(図2)。

  770人(男638人、女132人)の患者さんを分析しますと、男性に多いこと、男性30~40才台に多いこと、女性では20~30才台に多いこと、などが特徴として挙げられます(図3)。このことから予防接種を制度として受ける機会が少なかった男性に多いことが示されています。また妊娠適齢期の女性に感染者が多いことは先天性風疹症候群の発症リスクが高くなることを意味しています。まことに由々しき問題と考えられます。

  次に風疹の予防接種を受けたか否かについてです。770人の患者さんのうち予防接種を受けてない人は186人(24%)、不明の人は524人(68%)でした。つまり両者合わせて92%に上っており、感染者の人は、ほとんどの人が予防接種に無縁であったことが分かります。このように770人の風疹患者さんの調査結果からは予防接種の重要性が再認識されます。ただ日本では風疹の予防接種体制が何度も変更されたこと、MMRワクチンの問題があったこと、そのため多くの人が風疹の予防接種を受ける機会を逸したという経緯があります。幸いなことに日本においては1977年から1995年までは中学生の女子だけが定期接種(1回接種)を受ける制度が実施されました。これらの女性は、現在39才6ヶ月から56才5ヶ月となっております(図4の右下)。ところが男性は全く受ける機会がなかったために39才6ヶ月以上の男性は一度も予防接種を受けていないことになります(図4の右上)。さらに1995年からは(詳細は省きますが)定期接種制度が設けられたものの、接種率は上昇に至りませんでした。そのため現在28才6ヶ月から39才5ヶ月の人は1回接種を受ける制度があったものの、受けていない人も結構多いということになります。これから分かるように風疹は予防接種を受ける機会が極めて少なかった現在30~40才台の男性に多いことは当然の結果なのです。ようやく2006年になってMRワクチンとして風疹は定期の予防接種となり、2回接種が開始されました。さらにまた2008年から2012年の時限立法により、中高生に2回目のMRワクチンが実施され、ここに28才6ヶ月未満の人は2回接種を受けることが出来る制度となりました。

  現在、国は「早期に先天性風疹症候群の発生をなくすとともに、平成32年までに風疹の排除を達成すること」を目標として掲げています。また日本産婦人科学会も平成32年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「風疹ゼロプロジェクト」を立ち上げました。現状では東京五輪への影響があることも危惧されているからです。産婦人科学会では2月4日を風疹ゼロの日とし、我が国では風疹流行のリスクは消えていないと警報を鳴らしています。引き続き風疹については予防接種を中心とした対策が必要であります。

 次に梅毒についてです。厚生労働省の統計によりますと日本での梅毒患者は1967年に約1万1000人でしたが、その後は減少傾向にありました。ところが日本性感染症学会の梅毒診療ガイドラインによると2013年頃から梅毒届出患者数が男女ともに急増しているのです。それは2013年1228人、14年1671人、15年2697人、16年4518人という患者数の増加であります(図5)。さらに2017年では5200人の患者数となり、実に以前の4倍以上となっているのです。直近の国立感染症研究所の発表(本年10月10日)によりますと、梅毒の感染報告者数が5081人にもなっているとのことです。何故、このように近年増加しているのかは不明の様です。ただ梅毒は歴史的に流行を繰り返すことが特徴とされています。また留意すべきこととして患者さんの届け出数は東京、大阪、愛知という大都市圏に多いことが特徴です。地域差があるというわけです。大いに気になるところです。

 ここで注意すべきこととして男性は20代から40代の幅広い年齢層に多いのに対し、女性は20代前半に多いということです(図5)。この理由についても色々と挙げられていますが、まだ明確なことは不明の様です。

  困ったことに梅毒については医師も対応に困難を伴うこと、また疾患が複雑な進行形態をとるということ、そのため入念な注意が必要とされます。大事なことは、(当たり前ですが)梅毒という疾患を見落とさないこと、感染早期に抗菌剤を正しく使えば治癒するということ、先天性梅毒(胎内感染)を防ぐために早急な治療が必要であるということです。

 抗菌剤がなかった昔、梅毒は恐ろしい病気でありました。これに対し現在、医師を含め誰もが梅毒のことを過去の病気と思い、意識しなくなっている気がします。このことこそが梅毒患者の増加に繋がっているのではないかと思います。いま一度、改めて誰もが梅毒を再意識する時ではないでしょうか。

 

181012.1

図1 風疹患者さんの報告数

2008年以降では第3番目となるハイペースな数

国立感染症研究所のHPから

https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/180926/rubella180926.pdf#search=%27%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87+%E9%A2%A8%E7%96%B9+9%E6%9C%8823%E6%97%A5%27

 

181012.2

図2 都道府県別にみた風疹患者さんの数  首都圏を中心とした流行である      国立感染症研究所のHPから

 

181012.3

図3 風疹患者さん770人の性・年齢別の分析

   国立感染症研究所のHPから

 

181012.4

図4 風疹の予防接種制度の変遷と年齢

   国立感染症研究所のHPから

 

181012.5

 

図5 梅毒は増加している国立感染症研究所感染症疫学センター

平成28年度感染症危機管理研修会資料から

https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/kikikanri/H28/12-7.pdf#search=%27%E6%A2%85%E6%AF%92%E6%82%A3%E8%80%85%E6%95%B0+%E7%94%B7%E5%A5%B3%27

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME