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冬の空

[2019.02.09]

 2月3日の節分の豆まきが過ぎました。そして毎日全国的に寒い日が続いています。神戸の南京町では春節祭が賑やかに祝われました。神戸の空と山を見上げますと、どんよりした冬の空でした。その下で六甲の山々が雪の薄化粧をしていました(写真1、2)。こんな厳しい季節にインフルエンザは、まだ全国で猛威をふるっています。厚生省によりますとインフルエンザ患者数は定点あたり57.09人に達し、これは過去最高の人数とのことであります。皆様方におかれては過労を避け、十分に休んで日々を過ごして下さい。ことに受験生の方は万全の体制で臨むために体調管理に万全を期して下さい。私自身も人に言うばかりではなく、無理のない生活を送るようにしています。それでも梅便りが聞かれる季節が近づいてきました。春の到来は、少しずつ近づいてきています。

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  写真1 教会と六甲の山       写真2 冬の空と六甲山薄化粧

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 職場などで受けた健康診断の結果を持参され、「病院で再検査(精査)をするように言われました」と外来を受診される方がよくおられます。これらの人では健診で血圧が高い、高脂血症、糖尿病、肥満、貧血、肝機能異常etc・・・・・と様々な指摘を受けています。検査結果の説明書には、生活改善を促す指導などを書いた文章も添えられていることもあります。御本人は「肥満は自分でも分かっているし、痩せると良いのですが。肝機能検査の軽度異常はいつものことです。お酒もほとんど飲まないのに・・・・・」などと半ばあきらめ状態の人もいます。そこで今回、肥満と肝機能異常をとりあげ考えてみました。

 アルコール摂取量が多くて肥満となり肝機能障害があれば、それはアルコール性脂肪肝だろうということは多くの人が知っていることでしょう。また脂肪肝は酒を過量に飲むだけでおこるのではなく、運動不足や過食の結果、肥満となって肝臓に脂肪が沈着し発症する疾患です。現代社会の生活習慣の様式では肥満の人が増加せざるを得ません。ここ数年、女性はともかく男性の肥満は減少していません(図1)。これまではアルコール、肥満、肝機能障害は一体としてとらえられる傾向がありました。ところが1980年、ルドウィッヒ等が飲酒歴のないのにもかかわらずアルコール性肝機能障害に類似した症例を報告し、これを非アルコール性脂肪性肝炎と命名しました。それ以来、研究が進み今では非アルコール性肥肪性肝炎(nonalcoholic fatty liver disease、以下NAFLD、ナッフルディー)と広く呼ばれるようになりました。そこでNAFLDについて少し検討してみました。

 正直なところNAFLDという疾患・概念については、あまり一般の方々に知られてない様に思われます。そこでまずNAFLDを理解するにあたり 非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver、以下NAFL、ナッフル)と非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis、以下NASH、ナッシュ)の二つについての概念を理解しておく必要があります。何だか、よく似たアルファベット文字(漢字もですが)が並んでおり、頭が混乱しそうになります。そこで少し整理をします。図2に示しましたように脂肪が肝臓に多くたまった脂肪肝(図2の左端)には、アルコールの多量摂取によるもの(アルコール性脂肪肝)、およびアルコールをあまり飲酒していないもの(NAFLD,非アルコール性脂肪性肝疾患)の二つがあります(図2の中央)。どちらの脂肪肝でも肝硬変、肝癌に進行していきます。昔は前者のアルコール性脂肪肝が注目されていましたが、今ではNAFLDに目が向けられています。その理由はNAFLDでは脂肪肝から肝硬変にまで進行していく一連の病気ということが分かってきたからです。その定義は「脂肪肝を認めアルコール性肝障害などの肝疾患を除外したもの」(日本消化器学会NAFLD /NAFL診療ガイドライン2014 (https://www.jsge.or.jp/files/uploads/NAFLD_NASHGL2_re.pdf#search=%27NAFLD+%E5%AE%9A%E7%BE%A9%27)となっています。

 幸いNAFLDの大部分は病気として進行しません。つまり良性の疾患であります。そこでNAFLDのD(disease、つまり病気)を取り去り、NAFL(図2の右端下)と呼称されるのです。これに対し、残り少数のNAFLDでは疾患が悪化進行していき、これがNASH(図2の右端上)といわれているのです。NASHは進行性であり、診断は肝臓の組織を生検で採取し病理検査で確定されます。ですからNAFLDとNASHが問題となるわけです。そこで医学界ではまとめてNAFLD/NASHと呼ばれています。

 以上のようにNAFLD/NASHは理解するのに少しややこしい疾患かもしれません。ただNAFLD/NASHの人は増えています。常に考慮すべき疾患であり、見逃してはならないものです。注目すべきことはNAFLD/NASHは肥満と生活習慣病に関係しており、大変多くの患者さんがいると考えられる点です。見方を変えれば、NAFLD/NASHはメタボリックシンドロームが肝臓において出現したという考えもあります。日常臨床では常に念頭に置いておくことが必要です。

 ではNAFLD/NASHの人はどのくらいいるのでしょうか。日本消化器病学会によりますとNAFLDの有病率は9~30%、患者数は1,000万人以上いるとのことです。現代社会では肥満とともに患者数は増えているとされています。NAFLDは、男性は中年層、女性は高齢層に多い傾向があるとされています。またNASHの有病率については3~5%と推定されています。このようにNAFLD/NASHは数からみてもあなどれない状態なのです(https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/nafld.html)。

 最後にNAFLDの食事療法についてです。旭川医科大学の太田嗣人・教授の講演を聴く機会がありました。同教授によりますとアスタキサンチン、3-クリプトキサンチン、スルフォランを含む食品がNAFLDに良いとのことであります。これらが何故NAFLDに有効なのか、その詳しいメカニズムについては省略しますが、アスタキサンチンはインスリン抵抗性を弱め、また脂肪蓄積によっておこる脂質の酸化ストレスを抑制するとされています(https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/32091)。具体的に言いますとアスタキサンチンはシャケ、いくら、桜エビ、3-クリプトキサンチンはみかん、スルフォランはブロッコリー、スプラウトに多く含有されているとのことです。これらの食材をとることはNAFLDの対策上有効です。具体的な対応が難しいNAFLDに対し、具体的な食事療法が示され興味がひかれました。NAFLD/NASHには未知なことがまだ多くあり、今後の臨床研究の進展が望まれるところです。 

 

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図1 肥満者(BMI≧25 kg/m2)の割合の年次推移(20 歳以上)(平成17~27 年)

平成27 年国民健康・栄養調査結果 厚生労働省

https://www.ouhp-dmcenter.jp/project/wp-content/uploads/2016/11/c06e2f7052da3d108c0f8f3c8fe383b0.pdf

  

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図2 脂肪肝の分類と進行

 

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図3  NAFLD/NASH診療ガイドライン2014 日本消化器病学会編集

   本ガイドラインは、大変分かり易く解説されています   https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/NAFLD_NASHGL2_re.pdf#page=23

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